すさまじい勢いで鼻毛が伸びている。

なぜだ……なぜなんだ。
思い当たる節はない。

朝、置きぬけに洗面台に立ち、ふと鏡を見たら、
私の両鼻から毛虫が飛び出していた。
(と、その時は思った。)

私は仰天し、一刻も早く取り出そうと、鼻息を吹かした。
しかし…しかしだ、まるでその毛虫はビクともしない。

むしろ、まるでその行動をあざ笑うかのように、
ユラユラと体を揺らしている。

───────馬鹿にしているのか?

素手ということにためらいはあったが、
それ以上にこのような存在に
舐められているという状況を
『私のプライド』が許さなかった。

───────

一流進学校をトップの成績で収め、

日本の最高学府を主席で卒業し、

就職氷河期と言われたあの時代においても

引く手数多(あまた)の常夏ダンディとして、

日本に冠たるメガバンクに、

新入社員でありながら特別待遇の調査役で入社。

そこにても成果を重ね、出世を続け、

未来をなお嘱望されながらも、

私は時価総額世界一の

外資系金融機関に有望さを買われ

日本戦略の足がかりとしてヘッドハンティングされ、

今やその日本支部のトップの地位を確保している。



そして、なおその地位に満足することなく
更なる高みを望んでいる私…………


───────その私の鼻から毛虫だと?


私は毛虫の小尾(おび)を掴んだ。

「舐めるんじゃないっ…!!!」

-----------そして引き抜く!

…………!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?


「ぐうぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!?????」



毛虫を引き抜こうと力を込めたと同時に
私の脳天にいまだかつてない衝撃が走った。

あまりの衝撃に、腰が砕け、意識は朦朧とし、
もはや立つこともままならない。

--------------まさか。

ま、まさか……!!

そんなことが………

毛虫と見まごうか如く尋常じゃなく伸びきった鼻毛

それが私から『生えてしまっている』だと……?

ましてこんな鼻毛今だかつて見たことがない…。

なんということだ……。



『人類の財産は分け合うもの』という観点から

女の方からポリガミーを望まれるほどのこの私が

『そんな鼻毛を吹かして生きる』など……



──────────────恥辱!!


>>鼻毛二本目